監督を務めさせていただいてる篠原と申します。
『凪のあすから』も15話までのオンエアが無事に終わり物語は大きな舵を切り始めました。
ご覧になってくださってる皆さんは先のストーリーが知りたいと思いますが、そちらはひとまず脇にどけて、ここでは自分が担当した1クールめのエンディングについてお話ししたいと思います。
1クール目のエンディングはやなぎなぎさんの「アクアテラリウム」でした。
エンディングのコンテを描くにあたって100回以上聴いたでしょうか。
何度聴いても飽きのこない、ステキな曲です。
これにどんな絵をつけようかと考えるのは楽しい作業ではありますが、色々と悩みました。
安藤真裕監督のオープニングの出来が素晴らしく、それと釣り合いの取れるエンディングを作らなきゃと色々試行錯誤を重ねたわけです。(ここだけの話、結構なプレッシャーでした(笑))
もともとオープニングの明るい爽やかな夏のイメージの曲調と対をなすイメージの曲を、というところでスタートしていました。Demo曲が上がってきた段階で頭に浮かんだのは会田綱雄さんの詩「鹹湖」からの一節、
「僕の亡骸が 亡骸だけの重みで そのまま静かに沈んでゆくように」
というものでした。デトリタスという言葉も(恥ずかしながら)この曲で初めて知りましたが、イメージが重なることもありこの方向でまとめてみることにしました。
当初はまなかだけでなく、ちさきも一緒に沈んでいくイメージの絵も考えていました。
ちさきは渦に巻き込まれたわけではありませんが、海の中を深層意識と捉えれば絵として成立させることは可能です。
また行方のわからなくなったまなかのイメージとして、顔だけが水上に出ていてそれを水面下から見ている絵なども。
これ、結構怖いですね。
元ネタはビル・エヴァンスの「Undercurrent」というCDのジャケットなんですが。
少し動的な要素を含んだまなかの絵も考えましたが、これも曲のイメージに反するので却下。
さらに人魚姫伝説とからめて、海底の砂に埋もれた人魚の骨なんてイメージも。
あまりにも鬱すぎるのと、意味合いが色々ヘンなことになるのであっさり手放しましたけどね(笑)
かざしたガラスのコップにぬくみ雪が降り積もっていく絵も、静謐なイメージが気に入っていて最後まで残そうとしていたカットの一つです。
…とまあ紆余曲折を経て現在見られる絵に落ち着いたわけです。
13話までご覧下さった方には、色んな意味が込められていたことをおわかりいただけたと思います。
2クール目のエンディングも、視聴者の皆さんに想像の幅を持ってもらえるように作ってみました。
これまた長井龍雪監督のオープニングが素晴らしく、やはり釣り合いが取れるエンディングを考えるのに試行錯誤したのですが、それはまた別の機会に。
今後の展開にもぜひぜひご期待くださいますよう。
監督 篠原